城の用語説明

モットアンドベイリー Motte and Bailey

モットアンドベイリー(Motte and Bailey)様式


 モットアンドベイリー様式の城は、ノルマン征服王朝によりイングランドに持ち込まれた。

簡易な建築方法による城で、ノルマン征服王朝がイングランドを席巻して行く際に、既にサクソン(Saxon)人など先住民族の村落に隣接して建設した場合が多い。イングランドの各地に広く分布する。


 人工の山(Motte)を築く場合と、自然の山を利用した場合がある。自然の山の上に更に築山した場合も見られる。この山の上に木造で天守(Keep)を建設する。天守は丸く柵で囲まれたために、これを貝型天守(Shell Keep)と呼ぶ。天守の中には物見櫓が建つ。山の麓には(山を造るために掘った跡の)溝が設けられ、橋がかけられて天守まで続く階段が付く。

 

 人工の山の場合は、地盤が弱いので、大きくて重い建物は造れない。時代が下り、木造の天守は順次石造に改築されていったため、当初の木造の天守が残っていることはない。

 現在見られる石造の天守は、完全な円形とは限らず、楕円形や六角形、八角形のものもある。直径は9m~30mと大きさに差がある。壁厚は2m3mと薄い。壁を補強するために片蓋柱(Pilaster)が付いているものがある。壁の高さは6m~9m。


 山の麓には、居住用の建屋や倉庫、家畜小屋などを設置した。その周りを木製の杭で囲み、その外側に溝を掘り、場合によっては川の水を引き込み、水濠とした。この囲まれた場所をベイリー(Bailey)と呼ぶ。ベイリーの外に更に広くベイリーを設定している場合には、内側を内庭(Inner Bailey)外側を外庭(Outer Bailey)と呼ぶ。二つのベイリーが横に連なり、その中心にモットがある場合やベイリーがモットを囲んで複数存在する場合もある。